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Roastinghouse・・・日本語に直訳すると「焼け付くように暑い館」。このなんともいかめしい名前の出版社と出会ったのは07年の冬。とある音楽出版業界の先輩のお供として MIDEM に出席した時に遡る。当時、クラブミュージックの配信事業で思いっきり大コケし、そのお詫び行脚も兼ねて「涙目半分」で渡欧した筆者にとって、彼らとの出会いこそが、その後、ソング・ピッチャーとしての新たな人生を歩むきっかけとなるのだが、最初のミーティングは、ほんの10分程度。のちに繰り広げられる彼らとの濃密なリレーションとは好対照とも言える、あっさりとしたものだったことを記憶している。運命的な出会いとは、案外そういったものなのだろうか。ミーティングのあと、トイレで偶然会った時も、お互いに「あれ?誰だっけ?」といった感じの、誠にシンプルな出会いであった。
それから3年。共に手を携えて、数多くの楽曲を日本のマーケットへ送り込み、そして、数多くの日本人作家の海外チャレンジを笑顔で受けとめ続けてくれた Roastinghouse。その社長でもありプロデューサーでもある Theo とインタビューをすることが出来た。マルメというスウェーデン南部の街にあって、世界を虎視眈々と狙いつつも、常にクリエイティブにフォーカスする「硬派」な姿勢を貫く Theo。時差と距離があることを良いことに、海外に対してはいつも適当なことばかり言ってその場を凌いでいる筆者だが、この人の鋭い目だけは、なかなかごまかせない。しかし、この硬派な Theo が、今や日本人作家やアーティストの海外進出にガチで興味を持ってくれているのだ。こんな嬉しい話はない!ということで、インタビュー行ってみよう!
Q1 : まず、Roastinghouse について簡単にご説明いただけますか?
A : 1987年に設立されたRoastingHouse ABは、スウェーデンでも指折りの大規模なスタジオで、設備内には全部で9つのインハウス・スタジオがあります。また、制作部門に加えて、自社内での出版事業を含めたマネージメント部門である RoastingHouse Musicでは、自社のアーティストをはじめ、幅広い分野で活躍し、多くのヒットアルバムに楽曲を提供している作曲家達のマネージメントを行っています。2009年の全世界チャートのトップ20には我々の楽曲から2曲がチャートインし、また日本のアーティスト達にも多くの曲を提供しました。日本で最も活躍している海外の出版社のひとつであると自負しています。
Q2 : 現在、作曲家は何名在籍しているんですか?よろしければ作曲家の名前も教えてください。
A : 現在専属で契約している作曲家が17名在籍しています。皆それぞれに自身のスタイルやジャンルを持った作曲家です。
Anders Wrethov, Andreas Johansson, Alexander Holmgren, Anders Grahn, Mickey Huskic, Elin Wrethov, Amir Aly, Robin Abrahmsson, Maciel Numhauser, Peo Dahl, Johan Deltinger, Mans Ek, Martin Svensson, Dennis Dendo, Magnuss Johansson, David Fremberg, Joakim Dalqvist
Q3 : ヨーロッパやアメリカでの代表的な提供楽曲を教えていただけますでしょうか。
A : 私達は元々ハードロックやメタルの制作からスタートし、出版事業については、楽曲を提供したアーティストのアルバムについて行うことから徐々に基盤を固めはじめたので、曲のピッチングは2002年、最初のポップス系作曲家 Anderz Wrethov と専属契約を結ぶまでは行っていませんでした。
Anderz Wrethov は スウェーデンのアーティストSofie に提供した "Superduper kille" で、私達にとって初のNo.1ヒットをもたらしてくれました(同曲はデンマークでも1位)。また、Gunther & The Sunshine Girls (Warner) に提供した "Ding Dong Song" (Wrethov/Soderlund) はスカンジナビア全圏で大ヒットしただけでなく、UKでもトップ20に入る快挙を成し遂げました。その後も、オランダで爆発的な人気を誇るCH!PZや、スウェーデンのArash、そしてイギリスのSmokie など、ヨーロッパのマルチ・プラチナ級のアーティストに楽曲を提供しています。
Q4 : 日頃どのような方法で、海外のレーベルに対しての楽曲プロモーションを行っているのかを質問させてください。レコード会社のA&Rには、デモ曲をメールや曲のリンクで送っているんでしょうか?それとも、なるべく対面で会ってプレゼンテーションするようにしているのでしょうか。また、楽曲プロモーション専門のスタッフは雇っていますか?
A : 今挙げていただいたようなことは全てやっていますね。サウンドグラフィックスの皆さんとは Midem や Popkomm でいつもお会いしているのでご存知と思いますが、そういった場所で世界中のパートナーと対面で会うほか、もちろんメールで曲を送ることもあります。また、9つのインハウス・スタジオを持っている関係で、私達を訪ねてくる人々も大変多いですし、日本やアメリカ、ヨーロッパの各地に作曲家をコライトのために出張させてもいます。そして、つい最近ではBMG RMと、ヨーロッパにおける独占サブ・パブリッシング契約を結びましたので、今後ますます我々のプロモーションは活況を帯びてくることになると思います。
Q5 : 海外のレコード会社からのコンペ情報などは、直接A&Rから来るのですか?それとも、Songlink などのインターナショナルなサービスから情報を得ているのでしょうか。
A : 以前は Songquarters などの色々なサービスを利用していましたが、今は提携プロモーターやレーベルから直接来たコンペ情報だけですね。
Q6 : 日本にも、世界のレーベルやアーティストに曲を書いてみたいと思っている作曲家が沢山いるのですが、そのためには何が一番重要だと思いますか?世界中でビッグ・ヒットを提供している RoastingHouse の作曲家たちと比べて、日本の作曲家に足りない要素とは何でしょうか。
A : 日本の作曲家達とのコライトを数年前に始めて思ったことは、彼らには自信や、世界のマーケットでの経験がちょっと足りていないということでしょうか。しかし、それよりももっとやっかいな『敵』は、日本の作曲家たちも、海外の作曲家たちも、誰もが日本で楽曲を決めることにフォーカスしてしまっていることです。日本はヨーロッパの市場に比べて遥かにCDが売れますからね。ですが現在、その障壁はもはや残っていません。才能ある日本の作曲家が世界で活躍するのを心待ちにしているところです。
Q7 : 世界的に活躍するアーティストの楽曲を書くには、歌詞も大変重要なポイントだという話を聞くのですが、スウェーデンの皆さんも英語のネイティブ・スピーカーではありませんよね。歌詞の問題はどのように解決しているんでしょうか?たとえばネイティブの英語作詞家が作曲家をサポートしていたり、もしくは、英語の歌詞の書き方をじっくり勉強したりするのでしょうか。
A : 確かに近年、歌詞は大変重要なポイントです。幸い、スウェーデンの作曲家はみんな英語が上手ですし、また少々の文法的なミスが逆に歌の中でポイントになっていくこともあります。ポップスでは、100%文法的に正確なことよりも、メロディと合わせて心地よいことのほうが大切です。それでもUKやアメリカの天才的な作詞家には敵いませんから、そのような理由もあってコライトを頻繁に行っています。
Q8 : 日本で新曲が決まった場合、録音権からの収入が圧倒的に高いですが、ヨーロッパ内のいくつかの国では、特にラジオのオンエアでの演奏権からの収入が大変高いと聞きました。これはスウェーデンでも同様ですか? また、これまでの楽曲提供の経験から、UKやアメリカではどうなのかご存知でしょうか。あるドイツの作曲家は、ラジオで1曲オンエアされると7ユーロくらいの収入になると言っていたのですが…。これが本当だとすると、ヨーロッパのラジオでヒットすると演奏権の合計額はかなりの額になるでしょうし、日本で大ヒットしたアルバムからの収入と同じくらいの額になるのではないかと思います。こういった話は日本の出版社が最も必要としている情報なので、ご存知の範囲で教えていただければ幸いです。
A : そういった著作権管理的なことについては、経験ある専門の事務スタッフに任せているので、私自身はあまり詳しく知らないんです。そうすることで、私達はクリエイティブな部分に集中できるのだと思います。私達はクリエイティブな仕事、そして他のスタッフは別の部分で、それぞれにベストを尽くしています。
(筆者注)このテーマについては、興味ある分野でもあるので、後日、他の出版社とのインタビューにて突っ込んでみようと考えております。
Q9 : 今、音楽業界では多くのパラダイム・シフトが起こっていますが、音楽出版という観点に絞って見た場合、これをどのように受け止めていますか?出版社にとって、次のビジネスのソースはどこにあるとお思いですか?
A : そうですね、私たちも色々と考えてみましたが、アーティストやコマーシャル、映画、それに無数のオンラインサービスなど、人々はいつでも良い音楽を求めているという結論になりました。いま必要なのは、私たちとっても、そして、新たな消費者にとっても、双方が納得のいくようなレベルで、音楽の価値を取り戻すような新しいスタンダードを作り出すことです。もちろん過去のようにはいかないとは思いますが、音楽の市場を安定させ、業界全体と、新しいクリエイティブ・カンパニーを支えていかなければならないと思います。
Q10 : Roastinghouse では、ヨーロッパで日本人アーティストの育成をすることにも興味があると伺っているのですが、どんなタイプの日本人アーティストに期待しているのでしょうか。このような大きなチャレンジをするアーティストに求めるイメージは?
A : Roastinghouse では、日本人のアーティストを世界へ送り出すための、強力なクリエイティブチームの一員になることを非常に誇りに思っています。私たちは日本で仕事をするようになってから、素晴らしい才能をたくさん発見しました。ですが、これまでは彼らを世界に送り出すために何もすることができなかったのです。今はこのプロジェクトにとても重点を置いています。
Q11 : Roastinghouse のスタジオの設備について教えていただけますでしょうか。日本のアーティストも使用できますか?
A : Roastinghouse Studios は9つのスタジオの複合施設で、スウェーデンの最南部にある19世紀の建物です。どのスタジオも予約で使用できますし、レコーディング、ミキシング、マスタリングが可能で、世界中の大小さまざまなクライアントにご利用いただいています。バンドのミキシングに関してはすでに20年の経験があり、そこに私たちのスタジオを利用する価値を感じていただけると思います。
Q12 : 弊社サウンドグラフィックスに向けてメッセージをお願いします。
A : もし私たちがサウンドグラフィックスと出会い、コラボレーションを始めていなければ、日本における重要な海外音楽出版社の位置につくことはできなかったと断言できます。ソングピッチャーであり代表でもある Hide とスタッフの皆さんには大変感謝しています。
私たちの実力の源は、常によいアイデアとクリエイティブ・ソリューションにオープンであることと、仕事には「大きい仕事」も「小さい仕事」もないということです。関わり、そして何かを得ることに代わりはありません。
以下は私個人の信条ですが、日本の皆さんともシェアしたいと思います。
『もしあなたが音楽に関わるのであれば、そこには常に大きな成功のチャンスがある。ただし、成功するためには、あなたは自分の時間と努力を全てそのゴールに向けなければいけない。多くの人が、音楽業界は魅力的で簡単に多く稼げる商売だと思っているが、私は、音楽の仕事とは単なる仕事ではなく、アートであり、生き方だと思っている。』
Anders "Theo" Theander (Roastinghouse Music)
スウェーデン南部の都市 Malmo に拠点を置く音楽出版社 Roastinghouse Music の代表。サウンドグラフィックスにとって最も重要な盟友の一人である。常にクリエイティブな視点に立ち、日本の音楽文化に対しても最大のリスペクトを払ってくれる熱きミュージックマン。余談だが、奥さんは超が付くほどの美人だ。